「万葉集」研究で知られる犬養孝氏。
昭和50年代(1975-85)ころだと思いますが、「万葉」がブームのように話題になったころがありました。その中心に氏がいたように思います。
「万葉集」には、北海道・青森・秋田・山形・岩手・沖縄を除き、ほかの全ての府県のどこかの地名が出てくるそうです。いわゆる、古代の日本全国ですね。
その中でも、大和国(=ほぼ奈良県)の歌が最多だとか。
大和には 群山あれど とりよろふ 天の香具山
登り立ち 国見をすれば 国原は 煙立ち立つ
海原は 鴎(カモメ)立ち立つ
うまし国そ あきづ島 大和の国は
といった、国をほめたたえる和歌や恋愛歌、防人(さきもり:九州に単身赴任の兵士)の歌など4500首あまりがおさめられています。
現在、手軽に入手できる「万葉集」は以下のとおり。
○ 岩波文庫 1~5
○ 角川ソフィア文庫 ビギナーズ・クラシックス(現代語訳つき新版もあります)
○ 講談社文庫 1~3 ほか事典あり
○ 『万葉集 新装版』(リービ英雄 (英訳)/中西進(日本語現代語訳・本文)/井上博道(写真)/高岡一弥(アートディレクション))
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > 人文・地歴・哲学・社会 > 文学 > その他
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- 価格: 2,052円
それぞれの読み比べもおもしろそう。
さて。
当店本棚にあるのは
『万葉のいぶき』新潮文庫
『万葉の人びと』新潮文庫
『万葉十二カ月』新潮文庫*1
の3冊です。
先の「万葉」ブームのころに読み込んでいた記憶があります。
歌をいくつか紹介し、それに関連することをとても広範な知識の中からゆったりとした語り口で教えてくれるような気持ちになります。
学生のころに、真夏の明日香村を自転車でまわったことがあります。日影の全くない、ジリジリとした中をぐるぐる走り回り、石舞台、飛鳥寺、酒船石、亀石・・・体力にまかせて一気呵成に走り回ったせいか、なかなか古代の様子をはっきりとイメージするまでにはいたらず。帰宅後に改めてこれらの本を開いて「ああ、そういうことか」と思った次第。
詠み人のこと、その人生にふれるもの、万葉の時代をあらわしているもの、万葉の旅に連れていってくれるもの、いろいろありますが、「いぶき」から読んでみるとよいかもしれません。
犬養 孝(いぬかい たかし):1907(明治40)-1998(平成10)
『万葉集』研究者。研究とともに、各地に残る万葉集にうたわれた場所の保存活動や、普及のために尽力した。
*1:現在絶版。電子書籍はあるようです。「日本の古書店」でも取り扱いあり。